人工中絶の基礎知識
はじめに
母体保護法
人工的な妊娠中絶は、全ての方が手術の対象となる訳ではありません。日本では「母体保護法」という法律によって定められ、それに該当しないケースは、中絶することができないという決まりがあります。
人工妊娠中絶が認められるケース
- 母体の健康上の理由
・妊娠の継続が困難
・分娩が困難 - 経済上の理由
- 望まない妊娠
・暴行や脅迫など、性交の抵抗や拒絶ができなかった
「母体保護法指定医」による手術
産婦人科の医師であれば、中絶手術ができるという訳ではありません。人工妊娠中絶手術は「母体保護法指定の資格を持つ医師に限定」されます。母体保護法では、中絶手術が行える医師を「母体保護法指定医」と定めています。
当院の院長は、岩手県の医師会が指定した「母体保護法指定医」です。人工妊娠中絶手術ができる産婦人科なので、安心してご相談ください。
人工中絶手術の時期
早ければ早いほど、低リスク
最長で妊娠22週未満
母体保護法では、人工中絶手術ができる期間が制限されています。これは母体にかかるリスクの大きさや倫理的問題を考慮したものによる決まりです。
手術ができる期間は「妊娠22週未満」と定められ、妊娠21週と6日までであれば手術することができます。
初期中絶
初期中絶となる「妊娠6~9週」辺りが、一般的には妥当な時期と言われています。母体にかかるリスクも最小限に抑えることができます。
妊娠4~5週では、子宮頸管がとても硬いため、手術が困難になることが多いです。
その一方で、妊娠10週を過ぎてしまうと、胎児の成長に伴い、母体への負担も大きくなってしまいます。
中期中絶
妊娠12週を過ぎると、中期中絶手術となります。
薬剤を使用しながら、人工的に陣痛を起こして流産させるという選択肢が取られます。
12週を超えた中期中絶手術を行う際、日本では死産の届出が必要となります。そのため、11週目までの手術が推奨されます。
手術のながれ・術後ケア
手術のながれ
まずは診断をさせて頂き、患者様に、人工中絶手術の基礎知識を含めた手術のながれをお伝え致します。
手術前日には、安全に手術を施行するための前処置が必要です。
麻酔は本人の病気の既往などにより選択していきますので、お身体の状態に合わせて手術の計画を作り、患者様へお伝え致します。
手術の影響
手術をしてしまうと「次の妊娠ができなくなるのでは?」と心配される方も当然多いです。
手術は
- 術後の感染症
- 子宮穿刺(子宮が傷ついてしまう)
- 腹膜炎 など
これらのリスクは0とは言えませんが、細心の注意を払って手術は行われますので、「妊娠できなくなる」という心配はほとんどありません。
手術がスムーズに終われば、自然治癒力によって子宮も本来の状態に戻ります。
術後のケア
気をつけて頂きたいこと
- 体調管理
人工中絶手術は、心身共に大きな負担をかけます。
手術後は身体と心のケアが必要です。回復するまで、ゆっくり休みましょう。 - 感染症
手術後は安静かつ清潔な日常生活を心がけましょう。
手術後の母体は体力を消耗し、子宮も傷を負っている状態にあります。
術後1週間は、湯船につからず、シャワーだけで済ませるようにしてください。
過度な運動、手術直後の性交渉は避けるようにお願いします。 - 手術後の腹痛
術後、腹痛をうったえる方もいらっしゃいます。
痛み止め薬を処方させて頂きますので、我慢せずにご相談ください。
特に、痛みが酷い方、発熱を伴う腹痛がある方は、早急に受診してください。 - 手術後の出血
出血量も人それぞれ個人差があります。
・ほとんど出血が見られない方
・手術から数日経って急に出血する方
・最初から出血が多い方 など
約1~2週間出血が続いても、少量の出血であれば大きな心配はいりませんが、3日以上出血が続いている方は、一度ご相談ください。
術後の生理について
人工妊娠手術から、1ヶ月経過しても生理が来ない方は、必ず当院へご連絡ください。
(通常は、手術から1ヶ月程度で生理がきます)
- ホルモンバランスの乱れ
- 心理的なストレス
以上のような理由から、生理が遅れたり、早まったりすることもあります。
手術の費用・必要な書類
費用について
人工中絶手術 | 85,000円〜(税抜) |
---|
<注意>
費用は、妊娠週数により異なります。
12週を過ぎると入院が必要となり、普通分娩と同じ扱いになりますのでご注意ください。
次回妊娠希望まで、ピル等の避妊指導も行っておりますので、まずはご相談ください。
必要な書類について
妊娠中絶を行う際は、事前にいくつかの書類をご用意して頂きます。
- 同意書
- 身分証明証(免許証・保険証など)
- 保護者の同意書(未成年の方)
以上が必要です。
同意書について
- 手術を受ける本人
- パートナーの方
上記、2名のサインが必要です。
※ 妊娠発覚後、パートナーと連絡が取れなくなってしまった方は、一度ご相談ください。(本人の同意だけで中絶することができます)
未成年の方へ
未成年の方が手術を希望する場合、基本的に「親の同意」が必要です。様々な事情によって、「親に内緒にしたい」というご相談も受けることは多いですが、残念ながら親の同意なしでは中絶することはできません。
麻酔を使用した手術となり、出血も伴います。あなたの身体へのリスクを考慮した上で定められた決まりなので、ご理解頂けると幸いです。
初期に手術をすることで、母体へのリスクは軽減できます。
決断に躊躇されている方は、一度、当院までご相談ください。
すでに意志が固まっているという方は、なるべく早急に受診するようにしましょう。